媚肉の香り


2008年に今は亡きelfから発売された媚肉の香りの感想になります。
個人的原画・ライターランキングでそれぞれ上位に位置する市川小紗・土天冥海両先生のタッグともなればやらない訳にはいきませんでしたね。例えタイトルに苦手な寝取られがついていようと、やる前からシナリオのネタバレを喰らっていようとも……。

結果的にはタイトルに反して寝取られ要素はゼロに近いと言っていいレベル。期待していた寝取り要素に関しても同様だったのである意味タイトルで期待した方には詐欺ゲーのように見えてしまうかも知れませんねー(だからといってこのタイトルが作品に不適切なのかと言うとそうではないのが非常に難しいところ)。
それに加えてライターの過去作品が若妻万華鏡や夫の前で●されて…等そちらの方面で名作と言っていいレベルの完成度でしたからね。それは期待するだろうと(今ならあのガテン系とかもラインナップに加わりますしね)。だからある意味では罠ゲーなのかもw

しかし、とても良い作品です。常日頃食わず嫌いしまくりの私が言うのもなんですが、普段暗い雰囲気が漂う作品やこういうタイトルを避けている方にこそ騙されたと思ってプレイしてみて欲しいなと。
そう切実に訴えかけたくなるようなゲームでした。

以下は詳細な感想(一部ネタバレ部分は反転で読めるようにしています)。

◆シナリオ

ストーリーは以下のような感じ(DMM特設サイトより)。

拓也と由紀。二人は付き合って3ヶ月の恋人同士。
拓也は彼女と一緒に行く、卒業旅行の資金を貯める為、乙葉の家庭教師として、三澤家に住み込む事に。

三澤家の主、松太郎。彼は歳の離れた香織を後妻にし、一つ屋根の下で複雑な家族を構成していた。
大切に育てられた一人娘、乙葉。そして前妻の妹、律子。律子の長女、沙耶。そして長男の隆司。
特に律子は拓也が三澤家に関わる事を嫌い、顔を合わせる度に拓也の不幸を暗示する。
根暗な隆司は口数も少なく、拓也の存在を態度で否定し、沙耶は理詰めの会話で拓也を追い込む始末。
時を経る毎に叶家との溝は深まり、磁石で言えば同極の関係になっていった。

「この家はどこかおかしい」

何故か律子は香織に食事の用意をさせない。買い物すら許さず、料理は必ず家政婦の時江が作っている。
訝しく思いながらも昼食を食べ終わり、そのまま大人しく自室へ戻ろうとする拓也。
そして怪しげな男から封筒を受け取る律子に遭遇し、いかにもワケありな空気に思わず足を竦ませた。
唐突に浮かんだのは香織の寂しげな表情。
どうしてこの家は律子が我が物顔で、あの人は肩身の狭い思いをしているのだろう…。

「タッ君に逢えなくて寂しいよ」

二人の時間が制限された由紀。彼女は寂しさのあまり深夜に実家を抜け出し、押しかけ女房よろしく三澤邸へと忍び込む。
不謹慎な秘め事は気持ちを昂ぶらせ、二人はいつにも増して激しく求め合った。
だけどここは勝手知らない三澤家。気になるのは壁を隔てた隣の部屋だ。
いったい誰がいるのか。今の拓也には見当もついていない。
そんなある日、バイト先のメイド服を持ち、再び由紀は内緒で三澤邸へ。
さっそく拓也に披露しようと、壁に掛けられた鏡の前に立ち、そこで初めて拓也もその不思議さに気づく。
全身を映すには小さ過ぎ、顔を見るには位置が低い。

「一体何を映すために掛けられたのか」

訝しげに鏡を動かした由紀。裏壁には覗けと言わんばかりの穴が一つ。
不可解さを感じながら、拓也はそっと顔を近づけ、漆黒の闇に視線だけを潜り込ませる。
薄暗い穴の中から映し出されたもの。それはドレッサーで髪をとかす美しい香織の姿。
紛れもなくそこは松太郎夫妻の寝室で、信じ難い光景に拓也は言葉を失うしかない。
なんで? どうして?
頭に浮かぶのは疑問符の言葉ばかり。
そして覗いている自分への後ろめたさ。
良くない事だとわかっているのに、何故か拓也は壁から目が離せなかった…。

「俺がどうしてこんな目に…」

日を追う毎に狂い出す歯車。
三澤家の微妙なバランスに狂いが生じ、不可解な出来事が拓也の周りに起こり始める。
そして再び穴を覗いた拓也の目に映った光景。
振幅する白い豊満な乳房。微かに聞こえる押し殺した吐息。
衝撃と動揺の中、香織の耐え忍ぶ表情はあまりに切なく、決して悦びから作られていない事を拓也は知る…。


大まかなあらすじが説明しにくい作品ってあると思うんですけど、媚肉の香りは正にそれなんですよね。どうやって紹介したものか。
基本的なストーリーとしては上にもある通り、彼女と一緒に行く卒業旅行の資金を貯める為、家庭教師として乙葉を大学合格へ導くため奮闘する、というような感じにはなるんですけど、タイトルや上の紹介文、背景設定を見ればそんなのほほんとした雰囲気で終わるような作品でないことは明らか。
終着点が全く見えないまま三澤邸で住み込み家庭教師としての日々を過ごしていくことになります。本作はジャンル的にはサスペンスと言って良いでしょう。

こう書くとつまらなそうに見えてしまうかも知れませんが、実際にやると複雑な家庭環境の中で繋がれた人間関係、そしてそれらや事前情報から生み出される三澤邸のどこか落ち着かない雰囲気、このまま終わるはずがない、何かが起きるに違いないという確信に近い予感。

これらのおかげで物凄い緊張感(というより地に足が着いていない感じ?)に支配されたままプレイすることになりましたねー。ネタバレ喰らってるのに常に顔を強張らせながら三澤邸うろついてましたもの(あと松太郎が個人的に苦手でこいつには会いたくねぇと思いながらびくびくしてましたねw)。
私の場合はこれより前にプレイした「ボクの彼女はガテン系」のせいで土天冥海というライターが自分の中でホラーそのものな存在だったというのもあるんですけど、それ抜きでも薄気味の悪さは相当なものかと。

もう少し内容を知りたい方にあと一つだけ“敢えて”情報を開示するならばこの住み込み家庭教師としての生活そのものがある人物が用意したシナリオに沿ったものだった、ということですかね(これ以上事前情報増やしたくない人は読まないでくださいね。あと興味があるならこんな駄文はさっさと閉じて私のように核心部分のネタバレ踏む前にやってください)。
ちなみにクリア後にはそのある人物視点のネタばらしシナリオが解放されますのでお楽しみに。

終盤は結構色々な意味で驚くのではないでしょうか。面白かったですね、本当に。

そしてその面白さを支えているのが丁寧かつ魅力的なキャラ描写。
拓也くんの台詞にもあったんですけど、ちょっとしたきっかけでその人物の印象がガラリと変わるシーンが多かった気がしますね。
というより土天冥海さんが描くキャラクターはしばらく付き合っていると色々な顔を見せてきて次第に本当に一人の人間として認識できてくるんですよね。
第一印象が占めるウェイトは大きいですが、普通一、二回会ったくらいではその人のことは分からない。繰り返し接触してこそ、その人のことがぼんやりと見えてくるもの。そういう描き方がとても巧かったんです。
だから媚肉の香りで印象に残らなかったキャラクターって一人も居ないんですよ。最初は眼中になかったキャラでさえいつの間にか入ってくる。お見事としか。

敢えてウザい言い方で言いますけど、この辺が近年この媒体最大勢力の所謂萌えゲーのキャラクターとは違う点なのかなと。「この子はこういう性格でこのような趣味趣向を持っていて、あなたに対しては〇〇のような感じで接します!」 みたいな商品説明びっしりでその通りのことしかしない無菌室でパッケージングされたようなキャラ。それは決して悪いことじゃないけど、そんなのばっかりじゃつまらないよなと。
何が言いたいかと言うとどちらが良いとかの話ではなく、そういうのに食傷気味な方は媚肉の香りや土天作品がハマる可能性が高いのではというだけです。逆に多面性なんて望まないという方もいるでしょうし、そういう面がないのが核になるキャラも当然居るわけで。
大体こんなこと書いてる私も眼鏡キャラと喧伝されていた娘が途中で眼鏡外したりすると不機嫌レベルMAXになる我儘野郎ですしね。

話がズレましたが、キャラ描写でもう一つ触れておきたいのは土天冥海作品の女性キャラはとても優しいということ。優しいと呼べるキャラはそれこそ掃いて捨てるほど居るでしょうけど、深さが段違いです。何がどう違うのかは是非プレイしてみて頂ければと。

シナリオ、という点でもう一つ、どうしても伝えておきたいのはエロシーン。プレイスタイルは人それぞれでエロに関しては最初は全スキップして後で回想シーンで愉しむという方もいるかと思います。
が、こと媚肉の香りに関しては初めて見るシーンは絶対に飛ばさないでその場で見てほしいんですよね。市川小紗さんの美麗CGと土天冥海さんの良い意味でねちっこいテキストが合わさりとてもエロいのは勿論のことなんですけど、単にエロいだけではなく男女のコミュニケーションとして描かれ、相手の情感が身体の繋がりを通じて伝わってくるような内容になっているので、今エロい気分じゃないからとかで飛ばさないで欲しい、切実に。
媚肉の香りはエロシーンを見ているかどうかでそのキャラクターを見る目や感情移入の度合いもだいぶ変わってくるかと思います。それぐらいにシナリオの中での重要度が高いんです。
ここまでわざわざ読んでくれた方はプレイする時に絶対に飛ばさないでくださいね? 約束ですよ!? 守ってね!!


さて、ここからはちょっと私が愛して止まないあのキャラについて書かせてください。もう語りたくてしょうがないんですよ。

いや~それにしても香織さんの手腕には震えましたね。
事前に黒幕が彼女というネタバレを踏んでいたからこそ、バッドエンドを幾つか見た後は確かに彼女が怪しいと気付けるようになっているな~とか思いながらプレイしていましたが、表の香織さんがあまりに天使すぎてネタバレなしだったら彼女を疑うなんてことが出来ていたかどうか……それぐらい庇護欲を掻き立てられる女を演じているんですよね。
でもそんな女に見えるようなあの言葉もあの行動も全部が全部計算の内だったと。恐ろしい。

しかも本当に凄いなと思ったのはこの作品、結構選択肢が出てくるんですけど、中には選びたいけどこれ選んでも絶対日和ってやってくれないやつだろ~ってのが幾つかあってダメ元で選んでみると実行してくれるんですよ、拓也くん。
「よしっ!」と思いつつその結果に満足していると、それすらも香織さんの手のひらの上だったというね。自分の意思で選択したと思ったことが相手の術中だったんですよ。なんてこった。完敗です。クソ、あそこまでされたらやりたくなるでしょうそりゃ。
チンプイ、チンプイ、パパイヤ、ポン。これが魔法ですか。ネタバレなしでやっていたらもっとゾクゾクしただろうな~と今書きながら死ぬほど後悔しています。
というか終盤の刺激的な変装で自宅に来た香織さんに手を出さない拓也くんの精神力どうなってるんですかね? 他の傾国ポイントはギリ耐えれる……かも! とか思ってますけど、あそこだけは無理。いや、無理でしょ? 沙耶がいると思っても無理だよ……。

香織さんの何が良いって物凄い危険な思考しかしない人なのに九年間目的達成のために我を殺して腸が煮えくり返りながらも松太郎に奉仕して、律子の攻撃にも耐えてじっと雄飛の刻を待って耐え忍ぶその我慢強さとこれと決めた目標に向かって邁進する努力家で野心家な面が素敵の一言。
この犯行計画を企てただけあって頭の回転も速いのに不測の事態ではちょっと慌てちゃうところ(ただ立て直しは速い)とか計画が最終段階に移って一回だけ律子の皮肉に皮肉で返しちゃうところも可愛い。
また勘が良く、自分のツキの強さを信じていてそこに乗っかる度胸があるのもカッコいい。三澤香織に英雄の風あり、ですよ。クマのぬいぐるみにされても良いからお仕えしたい……したくない?

もう自分以外の人間はコマとしか見ていないような悪女の中の悪女なのに自覚がない恋を拓也くんにして、その感情の正体が分からずやきもきしてる所なんかもツボすぎて……あまりに好みの要素が多すぎて私の妄想ノートのキャラをそのまま出したのかと言わんばかりでしたね。

また普段の人妻天使ボイスとは対象的な本性を表した時のドスの効いた声で蓮っ葉なセリフをポンポン言う姿には痺れますね。媚肉の香りはどのキャラの声優さんも凄く良かったですが、こと香織さん役の三園あすかさんの演技は神がかっていました。堪らない。
「何一つ取り柄のない男は嫌いなの」、「今の一言は最高にムカついたわ」とかこの辺の言い方がツボで狂ったように再生してましたわ……(お気をつけての発音だけなんかロボットみたいだったのが気になりましたが)。由紀のお仕置きシーンも由紀、そこ代われ! って連呼してました。

これで眼鏡をかけていたら完全無欠だったんですけどねぇ惜しい。まあ完璧を直角に曲げるくらいが丁度いいと思っておきましょうか。
長らく私の中のエロゲ最強ヒロインは暁の護衛の宮川清美だったのですが、三澤香織の出現でついにそれが脅かされましたね。

出来れば彼女とのEDでは真っ当に添い遂げたい思いもありましたが、まあ仕方ないですよね。香織さんですから。
二年間美味い汁を吸わせて貰い、死に方も腹上死と。クマのぬいぐるみにされて換金エンドとしても撲殺されなかったり、いい思いさせてくれただけやはり拓也くんは特別だったんでしょうねー。
という訳で本年度のこの人に殺されたい大賞は三澤香織さんでした。ありがとうございますありがとうございます。


◆3D移動パート・CG・BGM

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本作のシステムの特徴として上の画像のような3Dで描画された三澤邸を歩き回るパートがちょくちょく挟まれるんですけど、これがちょっと失敗だったかなと。
最初の内はこれで家の構造を把握することが出来るじゃないのと思いましたけど、よくよく考えればそんなの多くても二、三回やれば十分なわけで、他に何か移動させる意味があるのかといえばないので正直背景の手抜きとプレイ時間の水増しにしかなってなかったなぁと。

松の書斎や着せ替え部屋みたいな隠し要素だったり、変なところうろつかないと出ないイベントもごく一部あったんですけど、やっぱり弱い。これで二回目以降は移動パート全部すっ飛ばせるとかあればよかったんですけど、ないので足枷にしかなっていませんでしたね。
まあ終盤のパーティ会場の移動は雰囲気出ていて良かったですが、全体としてはやっぱりマイナス。
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市川小紗さんのCGは言うまでもなく極上でしたが、elf・
Silky'sゲーではお馴染みのフェティシズム溢れる局部アップCGも勿論搭載。
しかも媚肉の香りは枚数も差分抜きで150枚とボリュームも特盛ですからね。鏡だけとか青空のみとかも含めての枚数ではありますが、それらを除外しても100枚は余裕で超えています。
グラフィックに関してはこれで文句言う人がいるならば目の前に引っ立ててこいと言いたいレベルで隙がないです。
勿論、どこぞの根雪の幻影みたいに市川先生が全然描いてないとかいう詐欺もないです。安心してください。

BGMに関しては曲数も少なく質も普通……なんですが、無音の使い方が効果的であったのとBGM15・沙耶専用曲のオルゴールBGMの破壊力が凄まじかったですね……。
パッケージ絵にもなっている壁に寄りかかって二人で会話するシーンは勿論のこと、BADエンドでの使い方が印象的でした。この手のBGMをああいう使い方されるのにほんと弱いんですよ……このオルゴールのためだけにサントラが欲しいレベル。


◆えっちなしーん

言いたいことはシナリオの項目で大体書きましたが、二点ほど追加で触れたいことが。
まず本作ではほぼ全てのエロシーンでAEによるアニメーションが採用されています(オフにもできます)。
他社で言うなら今は亡きテックアーツ系列のメーカーで結構あったやつを思い浮かべて頂ければ。最近だとファッキンE-moteで動かしてるメーカーも偶に居ますね。
E-moteの方は知りませんが、AEで動かしている他社に比べると動きが滑らかで明らかに画質が良い気はしましたね。何より搭載してるシーン数が段違いです。
私はちょっとAEやE-moteによるアニメは好きじゃないのでプラス要素にはなりませんでしたが……。

で、後は気になっている方がいるかもしれませんが、寝取られ(?)シーンについてですね。
あるといえばあるし、ないといえばないんですかね。一応BADエンドでモブたちにヒロイン勢がCG・尺たっぷりで輪姦されてしまうシーンが一つあります。
が、内容が輪姦であることと心を破壊し尽くすようなものなので私の中では寝取られではなく凌辱シーン扱いなんですよね。確かにシーン終盤では香織さんと由紀が完堕ちしてますけど、壊れてますからねぇ。ここをどう取るかで変わるかと。
それにしてもBADエンドの最後で床を這いつくばって階段降りるところはヤバかったですね。もうね、こういうところなんですよ、私の中で土天冥海がホラーそのものなのは。
深入りするととんでもないものが待ち受けているのが、嫌になるぐらい分かりきっているのに進まずにはいられない。どうしてもその先に何があるのか知りたくて、何かに取り憑かれたようにふらふらふらふらと歩いていってしまう。
例えそこに滅びの山の裂け目が見えていたとしても……。
正しく悪魔的ライターですよ。今回はガテン系ほどではなかったのでリアルの生活に支障をきたすレベルではなかったですけど、それでもやっぱりズドンと来ますよね。もう沙耶のCG出てオルゴール流れた瞬間天を仰ぎましたもの。

シーン数は以下の通り

由紀……4
香織……5
乙葉……4
沙耶……6
律子……1
輪姦……1(香織、由紀、乙葉、沙耶)


感想は以上です。
面白い上にエロい。なにより最高のキャラに出会えたことで満足度が非常に高い作品でした。文句なしのオススメです
ただ、最後に一つ苦言を呈するなら別売りの番外編である律子の溜息/由紀の香りは本編に組み込むべきだったなぁと。どちらも面白いですし(特に律子の溜息は是非にプレイしてください!)、由紀は本編で個別EDが用意されていませんでしたしね。