テンプレのコピー


2019年7月にHeliodorから発売された流星ワールドアクターの感想になります。

今回はトモセシュンサク先生こそいませんが、衣笠彰梧先生の久しぶりのエロゲということで期待されていた方も多いかと思います(“結”的な意味で不安になった方もまた多いでしょうがw)。

今回はレミニセンスに続いて社会人主人公で更に刑事モノ。
エロゲとしては珍しい題材ですし、久しぶりのエロゲ復帰作+ライトノベルのよう実の存在もあるので今回で初めて衣笠彰梧のエロゲに触れるという方もそれなりに居るんじゃないかと思います。

ただ、一ファンとしては先生の限界を感じさせられた作品でした。完成品ではありますが、未完結。面白いけど問題点は結構あると。
それだけならまあ過去作も大体そうなんですけど、今回はよう実と並行とはいえそこそこ時間を取れている(かなり前にシナリオ脱稿していましたし)上にライターに専念できていた、バックがDMMなので資金力も申し分ない(実際グラフィックやBGMはかなり充実していました)。
要は今までと違い言い訳ができない環境でしたからね(元々作り手の環境なんてユーザーが考えることじゃないですが)。なので今回も終盤力がなかったのはもうそういうことなんだろうと。

ちなみに過去作と比較するとコメディ重視の暁の護衛(終末論は除く)、シリアス重視のレミニセンスとするなら流星WAはその中間、バランス型に見えましたね(ややシリアスの方が多いかも。こんぼくはまだやってないので分からないです)。
個人的には今回で自分が一番好きな衣笠エロゲはレミニセンスなんだなぁと自覚しました。

以下は詳細な感想(一部ネタバレ部分は反転で読めるようにしています)。

◆ルート構成・シナリオ

攻略ヒロインは事前インタビュー通りクラリス、小町、メル、シフォンの四名。選択肢の積み重ねでヒロインルートへ分岐するオーソドックスなタイプ。変わった点としてはパワプロクンポケットのような時限制選択肢が幾つかあります。
時限制選択肢は折角付けたならもうちょっと大きな意味を持たせても良いかなと思いましたね。
あるルートで重要な分岐を果たすんですけど、時間切れでも正しい方に行ってしまうので、そこは時間切れならダメな方に進ませちゃって良いのでは? と。

残念ながら他の女性キャラにはルートもエロもありません。またクラリスのみ他三人をクリアするまでロックが掛かっています。


ストーリーは以下のような感じ(公式サイトより)。

第七共和国。その国を守る警察組織の中でも、厄介者やはぐれ者、問題児が集まる十三課。
その十三課に所属する主人公日流ルカは、刑事としての腕は立つが言動や行動に問題が多く、
かつて凄惨な事件を引き起こしたある事件に固執するあまり、上層部に目を付けられ十三課に押し込められていた。

誰とも組まず一匹狼を貫き通してきたルカだったが、
新たに配属されたエルフで新米刑事のクラリスとコンビを組まされることとなる。

息は合わず無能な新人、無能な上司の関係で時間が過ぎていく中、
第七共和国へと亡命してきた一人の少女を保護したことで、日々は大きく変わっていく。


本作は刑事モノですが、上のストーリーで分かるようにエルフを始めとする人間ではないファンタジーな異種族も出てきますし、ついでに言うと異能力もあります。
言うほど似てはいませんが、要素だけ見てざっくり言うなら昔やっていたドラマのSPECシリーズをイメージすると良いんじゃないかと思います。
異能を使って犯罪に走る不届き者を追う警察の物語ですね。

これが“男女”ともに魅力的なキャラクターと軽快なテキストでワイワイ賑やかに、時にはシリアスに進められるので相変わらずやめ時の分からない面白さに溢れています。

起承転結の結がクソ、常に未完と悪評も多い先生ですが、“退屈させない”という点では一級品なんですよ。この点だけでその辺のライターよりずっと評価できると私は思っています。いくら纏まっていても面白くなくて進めるのが苦痛なら物語として論外ですから。
勿論、後半雑なのは擁護不能というか純然たる事実ですし、叩かれてもしょうがないですが。
衣笠作品をやったことがない方は是非体験版に触れてみて欲しいんですね。その面白さと退屈する暇の無さが分かると思うので。合わなかったらごめんなさい。


少しズレましたが衣笠作品の特徴と言えばハイスペックで個性的な主人公の存在も忘れられません。
今回も今までと同じく、普段は道化を演じていて周りから全く評価されない(ルカを“知っている”人は評価しているいつもの)けど、実は有能というお得意の昼行灯タイプ。
また教団事件が絡むと途端にリミッターが外れたり、持っている異能が強すぎて普段は薬で抑えておかないといけないところなんかも中々厨ニ心を擽られますね。

従来の衣笠主人公が好きな方は問題ないかと思いますが、海斗のように礼儀もクソもない俺様タイプなので苦手な方はご注意を。
秀隆は好きだけど海斗はちょっとという人もキツそうなのでその辺が気になるようなら体験版プレイは必須ですね。
ただ、この性格のせいかレミニセンス、よう実ではイマイチに思えたコメディパートのキレが戻っていると感じられました。コメディが好きで上の二作は物足りないと思った方は期待していいかと思います。


しかし、キャラクターやテキスト等が良くても問題になるのはやはりストーリー後半部。
ハッキリ言って今回も後半雑ですし、天災とか言われて大騒ぎになるデルーガがちょっと強いセグイット一人で倒せるレベルだったり、超強い能力持ちで主人公に好意的な人物をヤバい案件の時でも積極的に活用しようとしなかったりと背景設定も中々にガバいです。

本作をどの程度許せるかはプレイヤーがどこに比重を置いているかにも寄ってきますかね。
ヒロインの問題は個別ルートで大体解決します。なのでヒロイン中心に物語を捉える方はギリギリなんとかなるかもしれません。
投げられてしまうのはこの世界の設定と主人公にとって重要になる教団事件関連。クラリスルート後に追加されるEPILOGUEの内容はEPILOGUE? PROLOGUEの間違いでは? と思った方もいるかも知れませんね。
なのでこの辺りは語られて然るべきだと感じる方には大なり小なり不満が残る形になると思います。私もそうです。

この教団事件を投げることの何が不味いのかというと、第七共和国に密接に関わるからということよりも主人公であるルカとの繋がりが強すぎるからなんですよね。
ルカは早い段階から「自分は教団を潰すためだけに生きている」、ということを本編で何回か言います。

クラリスルートで語られたルカの過去話にある通り、何もなかったルカにとっての全てであり、正しい人の象徴/目標でもある武蔵の裏切り、不可抗力とはいえ、それを直接葬った自分への罪の意識。間接的に自分の全てを壊したとも言える教団への怒り

この先を描くことを今回は完全に放棄してしまっているので日流ルカというキャラクターを描ききることから逃げてしまっているとも取れるんですよね。主人公は殆どの作品においても非常に重要な意味を持つポジションですが、こと衣笠作品においては特にです。その物語の核になると言って良いものを途中で投げてしまっているから大きな問題と言えるんだと思います。
魅力を完全に引き出せていないのでルカ自体に物足りなさを覚えている方は割と居るんじゃないかと思うんですよね。
暁はちょっとやったのがかなり前なので覚えていませんが、レミニセンスでは秀隆の全てとも言っていい秋との関係を描ききったからこそ地上問題ぶん投げとかも許せなくはなかったんです。

でも流星WAは違うと。私は本作を楽しめたんですけど、ここがとても残念に思えました。衣笠彰梧作品の主人公だけあって持っている魅力のポテンシャルは大きいのがまたたちが悪い。

……本筋に関わらず、やる気も感じられなかったシフォン関連を全削除で教団に回せば良かったのに。

大きな不満ポイントはこんな感じでしょうか。
暗い話ばかりだとアレなので最後にお気に入りのシーンをひとつ。
クラリスルートのリンダを捕らえるために能力を抑える薬を飲まずに耐えるルカにクラリスが必死になって薬を飲ませようとするシーンがめっっっっっっっっっっっっっっっっちゃくちゃ好きです。
目的達成のために命を燃やし尽くすレベルで無茶する主人公を必死で止めるヒロインの構図が本当に好きなんですよ……ヒロイン側が泣き叫んだりするともっと良かった……美女に本気で心配されたいだけの人生でした。
以上です。


また本作はグラフィック、BGM共にクオリティ・ボリュームの点で文句なしでした。
CGは差分抜き102枚+背景多数。BGMは60曲と大作と言っていいでしょうね。グラフィックで敢えて一つ不満をあげるなら男がちょっと細すぎるかなぁと。シュバルトとかはもっとゴツくしても良いと思うんですよね。
女性キャラは皆可愛くて良かったです。涼子さんと冬美と珠子攻略したいですわぁ……。

見た目、という点では立ち絵の表情差分が豊富なこと(特にクラリス。百面相状態で非常に可愛いです)とバトルシーンなどではエフェクトは勿論のことムービー、アニメーション等も組み込んでいて盛り上げていましたね。
もう一捻り欲しいところではありましたが、まあバトルメインの作品ではないのでこれでも十分じゃないでしょうか(対デルーガは寂しすぎますが)。

OPムービーも超王道で遊びはないですが、歌と合わせてとても良い物に仕上がっていました。クリア後に観るとまたカッコ良い構成してるなぁとその良さを噛みしめることが出来ましたね。

またもう一点、プラス要素としてはシステム周りが充実していることも挙げられます。
バックログからのジャンプ、次の選択肢までジャンプ、一つ前の選択肢までジャンプ、ボイス登録機能などが揃えられているのでかなり快適にプレイすることが出来ると思います。


◆えっちなしーん

流星ワールドアクターが明確に今までの作品より進歩したと言えるのは間違いなくここでしょうね。
驚くべきことに普通に“使える”モノになっています。本当にびっくりしました。何故トモセ原画作品でこれを出来なかったのかと悔やんでも悔やみきれません。
レミニセンスCEでここまでやれてたらマジで一生使えたのに……。

導入こそ雑ではありますが、レミニセンス二作や暁の護衛無印、休日のようにテキストは悪くないがとんでもない短さでもなく、終末論のように尺は十分あるものの喘ぎ声しかないクソテキストでもない真っ当なエロに仕上がっているのでこれはよくぞやってくれた!!!! と言いたいですね。これに関してはDMM側のDが相当上手くコントロールしたんじゃないかと思っています。
また春夏冬ゆう先生の絵が意外とと言ったら失礼ですが、とてもえっちなのもまた良かったです。流星WAのエロは表情が凄く色っぽいんですよねぇ。以下個人的にえっちに思ったヒロインの表情集。各1枚。

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恋チョコの時は下半身がまるで反応しなかったのでえっち絵の方面で期待していなかったのですが、お見事です。

以下はシーン数。

クラリス、小町、メル、シフォン……各4。

シーン数は平均的ですが、今回は二回戦などもあるので数字以上に満足できるのではないかと思っております。
買いたいけど、エロが心配で……という衣笠ファンの方は騙されたと思って手に取ってみてくださいね。あ、和姦で抜けない方は勿論ダメですよ?


感想は以上になります。
正直今でも衣笠先生は好きなので、新作が出れば喜んで買うでしょう。それだけ面白く退屈しないおまけに男キャラも女キャラも魅力的なエロゲというのは私の中で貴重なので。
ただ、今までは淡い期待として持っていた後半も完璧な衣笠作品はもう望めないのかなと諦めがついてしまう作品でもありました。