魔法少女消耗戦線

2021年3月にmetalogiqから発売された、魔法少女消耗戦線 DeadΩAegisの感想になります。

最早死にかけと思われたcyc系列ブランドから放たれたるは原画・上田メタヲ先生、シナリオ・丸谷秀人先生のちょっとレトロな香りが漂うコンビの魔法少女モノ。

魔法少女なんて可愛い単語が出ているものの軍隊要素が強い上に消耗、という単語の通り、極限状況下でひたすらに少女たちがすり減っていく様が描かれるのでプレイヤー側としても中々にしんどさを感じるものがありましたね。
しかし、その悲と惨と苦とエロをガチガチに組み込んだシナリオにより久しぶりに面白い“アダルトゲーム”を見せてもらったと拍手を贈りたくなるような作品でございました。
後述する無視できないウィークポイントも幾つかありますが、オススメです。

キャラクターの配置や方向性はEmpressのLEWDNESSに近いところがありますが、あちらにはエロで劣りシナリオで勝るといった印象。
なのでLEWDNESSのシナリオにもっとやれたのでは? という感想を持った人にもこちらをオススメしたいところです。

以下は詳細な感想
(一部ネタバレ部分は反転で読めるようにしています)。

◆ルート構成・シナリオ 

本作は女性である飯塚みのりが主人公であるため、所謂攻略ヒロインという概念はありません。
EDは2つ(+DEADエンド1)ありますが、中盤の選択肢一つで分岐するタイプなのでゲーム性はほぼゼロのストーリー重視型です。
一応それ以外にも選択肢はありますが、直後のエロが多少変わる程度のものしかありませんからね(ここでよろしくないものを選び続けるとCG有りのDEADエンド行き)。


ストーリーは以下のような感じ(公式サイトより)。

西暦2099年。人類は新たな大航海時代を迎えていた。

人類はさらなる生存圏を求めて広がり、月面基地や火星基地は都市と呼べる規模となり、月にいたっては自治さえ獲得していた。
資源を求める企業や国家は、小惑星帯にまで進出し、ついに、有人宇宙船が天王星まで到達しその帰路についていた。

人類同士のいがみあいは続いてはいたが、未来は明るいと思われていた。
天王星から帰還途中の宇宙船が、火星近傍で突如として消息を絶ち、そこに大規模な異変が観測される。

それはエイリアンの侵略の予兆であった。
エイリアンはクラゲやイソギンチャクを思わせる姿であったことから、彼らはCOSMIC CNIDARIAN略称 C.Cと呼ばれることになる。

地球側は足並みは揃ってはいなかったが、なんとか地球統合軍を編成。
だがC.Cは火星基地近傍に集結した統合軍を一蹴。
火星の生命を絶滅しつくすと、C.Cは地球へ向かって侵攻を始めた。

残存の地球統合軍は月近傍を最終防衛線と定めたが、C.Cには通常兵器どころか核兵器も通用しない。

人類が終わりを迎えるかと思われた時、統合軍が投入したのが 特殊戦技兵団(後の通称、魔法少女隊)であった。

アニメやMANGAから抜け出したかのような彼女らは、月近傍でC.Cを迎え撃つ。

参加兵員の損耗率95%という全滅に近い被害を出したものの、後に英雄と呼ばれるリゼット・オージュローが月の軌道を変え、C.Cの母船らしき超巨大飛行物体に激突させるという戦法で破壊、一時的ではあるが、C.Cの撃退に成功する。

これが月軌道会戦である。
C.C侵攻ルートを逆に辿って人類が見たのは宇宙に浮かぶ異空間への入り口であった。
そこからつながるチューブを通過した先には、赤色巨星と、その周囲に月ほどの遊星がひとつだけ浮いている異様な球状空間が広がっていた。

その遊星は遠目には美しい花々が咲き乱れる楽園のように見える。
しかし、倍率をあげてみれば花と見えるものは色とりどりの触手が作り出す模様であり、無数のC.Cが生息していた。

C.Cは全滅しておらず、この遊星、その空間こそが彼らの拠点であった。

再侵攻に備えて、地球統合軍は地球の総力をあげて球状空間のチューブへの入り口に巨大な前線基地「カテドラル」を築いた。

ここに2108年現在未だに続く地球の存亡をかけた戦いが始まったのだ。

宇宙を舞台に侵略者であるエイリアン(以下CC)と地球の存亡を賭けて戦うSFモノ……なのですが、公式サイトの可哀想=エロから始まるコンセプトの通り、CCがどうこうというよりも歪な人間関係と残酷な世界と戦場の姿をこれでもかと描くのが主となっております。

地球上では華やかに勇ましく戦う魔法少女たちを喧伝するも、その実態は悲惨の一言。

まず、CCとまともに戦うためには敵であるCCにぶち犯され、運良く殺されずに奴らの種を子宮に植え付けられるのが必須であること(この状態の子宮は聖杯と呼ばれ魔法の原動力になる)。
その上強い魔法を発動するためには性的昂奮が必要であり、戦闘では子宮と一体化したCCの種の効果により媚薬漬けに近い状態の自分の身体を弄るなりして発情を促し、おまけに魔法強化のためと軍が用意した兵装と言う名のエグいアダルトグッズまで身に着けさせられると。

このため頬を赤く染め、股ぐらを濡らし、雄叫びや技名の代わりに嬌声が飛び交うような戦場なのですが、シュールでありつつも緊張や悲壮感が支配する力が強く、不思議とエロいどころか先が気になって次へ次へと真顔で進めてしまうところがありましたね。
これは単純に宇宙戦争モノとしての描写が優れているというのもあるのですが、序盤の選択肢も功を奏しているところがあります。
性的なことに前向きになるかどうかみたいな内容のそれなのですが、そこで清くあれと目を逸らすとDEADエンド行きなんですよ。
ふざけているように見えようがなんだろうがエロくならないと生き残れないのです。

要はオタクが好きなえっちで強くなる変身ヒロインを大真面目に描いている訳ですが、それを極限まで道具として消費し尽くす描写はひたすらに苦しく、明るい未来がまるで見えません。

そんな惨めで淫らでその癖、死の危険はいつでも付きまとう過酷な戦闘を終えた後は発情が収まらないことを見越した軍の男たちに身体を良い様にされると。
正に骨の髄まで魔法少女たちを使い倒す戦線な訳です。

特にこれを体現するのが正義マンとでも言うような性格の主人公・飯塚みのりであり、CCにも男たちにも、そして女達をも歪めていくカテドラルのシステムにも屈せず、それが故に彼女の尊厳と精神がボロ雑巾のように削れていく様は苦しくも見どころのひとつ。

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折れては僅かな希望を糧に立ち上がる不死鳥のような女にも見えますし、折れたらまた別の方向にベキベキ折れてなんとか立っている/立たされているようにも見えます。

……それとは別にやはり支配者側からすると噛み付いてくる小生意気な女にエロいことをするというのはえっちですよね、うん。


そんな苦界とでも言うような本作の世界なわけですが、やはりそれだけでは色々と持たないので緊迫感あるCCとの戦闘を筆頭にここに留まらせるだけの要素も豊富です。

ひとつに本作のメインの一つであろう女子の友情ゲーとしての側面ですね。
みのりの相棒となるツンツンした秀才のイリューシャとある意味三人娘で一番強かなほんわかバカ女の七虹という女子二人がいるのですが、彼女らの健気な支え合いは清涼剤の一言。
故に天使ルート(カテドラル残留ルートの公式名称)での七虹の裏切りは応えましたね。悟が出てきてしまった以上、やってくるだろうというのは十分分かってはいたのですが、イリューシャが殺された後のアレですからね。
分かってはいたけど分かりたくなかった、というような主旨のセリフも辛い。取り敢えず悟は地獄に堕ちろという感想は大半のプレイヤーが持ったと思います。



ひとつに脇を固めるキャラも魅力的なんですよね。まあ主にキニスン司令なんですけど。
彼はカテドラルの支配者なのでそのカエルみたいな醜悪な面に相応しく、特殊戦技兵を消費し尽くす戦いを何年も続けている悪魔みたいな男なのですが、彼は外道であると同時にカリスマもあるんですよね。
それは人心掌握の手法が優れている、というだけではなく、作中でも言いますが彼が人類の勝利のために消費する対象は特殊戦技兵である女だけではなく、自分やカテドラル他全ても含んでいるから。
彼はこれでは軍人ではなく女衒のようだと自嘲していましたが、使命のために屍を築き上げながら進むその様はクズではありつつもやはりカッコよくもありましたね。
それにしてもあの偉丈夫があんなデブになるなんてどんな事故だったのでしょう。

脇というと先輩魔法少女である麗残雪も外せないでしょうね。
リゼットの人気投票での強さは個人的にかなり謎なのですが、苦労人かつ気高さを保ち続けて短い登場ながらも見せ場がたくさんあった彼女はそりゃ魅力的だろうと。
是非本編で彼女の勇姿を見ていただければと思います。

これらを持って苦界を泳ぎきった先にある結末と見えてくる魔法少女たちを消費する者たちの姿は中々に味のあるものだったと思います。是非2ルートともやって頂きたいところ。


◆問題点

次に序文で述べたウィークポイントなのですが、これはどれもかなり分かりやすいので、恐らくプレイした方の大半が似たような不満を持ったのではないかと思います。

ひとつにガチガチにシナリオに組み込んだが故に数は多いが尺が異常に短いエロシーンたち。
基本的に本作は歪なシステムに消費される少女たちを描く作品であり、尊厳破壊と心身の摩耗が主。
よって女を嬲るのに最適なエロを持ってそれを行うのですが、シナリオ上に必要な分を描いたら即終了させるようなスタイルなのでまあ短いんですよね。

尺を長くとると“使われる”ことを見ているサービスとしては良いが、シナリオのパーツとして見ると冗長になるので今回はパーツとして割り切ったのでしょうが(故に本作はエロを飛ばすとかなり面白さが削がれてしまうと思います。本編では飛ばして回想でじっくり派の人も今回は見ましょう)、度を越した早漏、あるいは射精にすら持っていかない無慈悲なカットが入るので好みのシチュがあろうが使うのはかなり難しいと思います。
加えて魔法少女×異生物なのに対CCエロや魔法少女コスでのエロがほぼないのも人によっては致命傷かも。


ひとつにフルプライス(豪華版はそれを超える)なのに少ないCG数。要は絵素材がシナリオに対してまるで足りていない問題。
本編62枚+外伝4枚なので低ボリューム代表のライアーソフトに毛が生えたような枚数しかありません。

シナリオは量が作品の良さに直結するかというとNOなのですが、イラストは増えれば増えるほど見栄えが良くなり表現の幅も広がりますからね。それが個人的なフルプライス最低ラインの80枚代に達してすらいないのが参りましたね。
エロ非エロ問わずえっこのシーンにCGないの~? と思うことがちらほら。

素材不足というとCGだけに留まらず、他のところも足りていないのが多々。
特に本作は軍隊要素が強いので当然、公式サイトに出ているキャラクター以外も同僚がたくさんいるんですよ。最初の篩に掛けられた後の特殊戦技兵団だけでも主人公らを含めて57名います(ちなみに資料集によると全員に国籍と名前が設定されています)。

そしてこの同僚たちの中でも特定のキャラは頻繁に名前やどういうキャラなのかの描写が地の文で入るのですが、地の文だけでCGやボイスどころか立ち絵もなければセリフすらないんですよね……アリシャやキバキなんかは特によく名前が出るのでこの辺にボイスはともかく、立ち絵とセリフ与えないってマジ? と言わざるを得ないです。
バンカーなんかに立ち絵付けている場合じゃないでしょ……特にアリシャに関しては(厳密に言うとアリシャ以外もですが)後に変わり果てた姿で敵として再登場するという役回りまであるので、ほぼ必須と思うんですけどね。

シナリオの力を絵で上げられるポイントが幾つもあるのにそれがどう見ても資金力がなくて出来ていないのが分かりやすく伝わってしまっているので残念極まりないですね。
戦技兵団の集合絵とか最初の方に出して差分で徐々に減っていくとかのベタなのもやって欲しかったんですが……。

あとはまあ細かいですが、八月大攻勢の辺りかどこかで戦況を淡々とテキストで描写するところがあるのですが、この辺も絵と言わずともよくある凸マークかなにかでCCと魔法少女側の動きを表現してもらえるとより良かったなとは思います。
ちょっともう朧気ですけどCC側が十面埋伏みたいな戦法を採ってくる場面もあるのでその辺も視覚的に訴えかけてくる何かがあればなぁと。


感想は以上です。
いつもはエロシーン数も記載しているのですが、本作は仕様上数えるのがかなり面倒なので勘弁してください……使い物にもなりませんし。
内訳的には八割がみのりで残りがイリューシャと七虹。雀の涙ほどのものがリゼット残雪キルケにある程度。特に後者の三人で致そうとしている方は悪いことは言わないので外伝含めて使えないと思っていてください。

かなり面白かったのですが、やはり素材不足が深刻なのが見て取れるのが非常に痛い作品でしたね。
ですが、ここ最近で出た“エロゲ”の中では抜群の面白さを見せたと思っているのでシコ要素に過度な期待を持たなければオススメです。
個人的に今までプレイした上田メタヲ先生作品で一番楽しめたので、ライターはまた丸谷先生でやってほしいと思いました。