円交少女 ~陸上部ゆっきーの場合~


2015年5月にFrillから発売された、円交少女 ~陸上部ゆっきーの場合~の感想になります。

聖娼女から約二年という長い間を置いてリリースされた低価格エロゲ、円交少女。

ディレクター・ライターを努めた丘野塔也氏が聖娼女でやりきれなかった二つのこと、売春と枕営業のうち売春にフォーカスを当てた作品だそうです(frillニコ生での発言)。

物足りない部分はあるものの、恋泉天音の絵を筆頭にシナリオ、エロ、BGM全てが纏まっている作品だったかなと。



◆シナリオ

シナリオは陸上部のエースとして結果を出していたものの、足を壊したことにより部を引退。

今まで築いた全てを失った女の子・悠希(ゆっきー)が中学時代の友人・真子(パコ)と再会し、彼女が悪いホストに嵌り込み溜めた借金を返すために援交を強要されているという現状を見て、それを助けるために自らもまた援交に身を堕としていく、というもの。

シナリオの流れだけ見るとアレですが、実際にプレイしてみるとゆっきーの心の動きが良く描かれていることがわかります。

陸上一本でやってきてそれを失くしたゆっきーが抱えた虚無感、そこにパコが結果としてはつけ込む形で援交の道に引きずり込む。
勿論本意ではないので身体なんて売れないと嫌がります。

しかし絶対的な拒絶というわけでもないせいか、ずるずると援交に嵌っていきます。


普通の人間として、女の子として好きでもない相手に身体を捧げることなんて出来ない。
ましてやお金で売るなどもっての外、という思いと陸上を失った自分にはもう何もなくどうでも良いという自暴自棄というレベルではないが、投げやりな気持ち、そこに乗る友達を助けたいという気持ち。

そういった様々な思いに呑まれ、流されて援交に至ってしまうというのが本作の魅力の一つ。

援交エロゲにありがちな身体売って気持ちよくなってお金も稼ぐぜ! みたいなガチガチのビッチギャルではなく(それはそれで大変魅力的ですし、シコれますが)、思春期の普通の女の子なんですね、ゆっきーは。

例えば行為の最中に写真を撮られてそれをどうしようかと悩んだり、妊娠したくないからゴムは付けてと頼み、心まで売っている訳ではないと心で抵抗する……そういう娘が堕ちていく様を見たいという方は満足できるのではないでしょうか。


あとはプレイしていて強烈な印象を残したシーンが三つ。

ゆっきーが父親のような歳の男に抱かれ、頭を撫でられた時にふと、父親にそんなことはされなかったなと振り返って泣いてしまう、というもの。

地の文は少なく、多くは語らないスタイルのテキストですが、偶にこのような腹にズドンと鉛を落としてくるような描写をさらりと入れてくるのが憎い。

CGこそ入るもののガッツリ描いているシーンではなかったのですが、ここを見た時に思わず、「うっ」と声が漏れそうになりましたね。

場違いのことに心を流されてそのまま泣いてしまうというのは生々しかった。
同時にそういった方向性での親の愛情を与えられなかった境遇を思うと悲しくなりますね。

進学先やらを考えてくれているし、会話も上辺だけのうすっぺらさがあるものの、あるにはあったので全く愛されていないと言う訳ではない。

でも頭を優しく撫でてくれるような、分かりやすく暖かいそれは与えられなかったのだなと……そしてそういったものを初めて与えてくれたのが見知らぬ身体目当てのおっさんというのが悲しい。

しかし、そのような娘がセックスに溺れていく様が非常にエロい。シコれます。


そしてもう一つ、パコとゆっきーが3Pでウリをした際に想像以上の大金を貰ってゆっきーが不思議な充実感と空しさを感じるシーン。

陸上をやっていた時には周りから評価されていた自分。
それが失くなって空っぽになった後に援交の際にこういう形でまた自分を見てもらっている。
失くした清らかなものを援交という歪なもので埋めている充実感と空しさ。

後はやはりラストシーン。詳しくは書きませんが、これは良い落とし所だったなと。


こういうところが非常に良く描けていたなあと思うのと同時にもっと地の文で描写しても良いのではないか、と結構な頻度で思いましたね。

あまりグダグダやってもしょうがないことではありますが、要所要所ではガッツリ地の文で心情描写を書いても良かったのではないかと思うのですよねぇ。ここが本当に不満。


不満点といえばボイスが再生されると強制的にBGMの音量が下がるようになっていたり、聖娼女のようにエロシーンだけバルーンテキストにすることができないなどのシステム関連ですかね。

特にバルーンテキストは通常シーンもこれに収めるためにテキストを削ったというようなことをニコ生で言っていたので大分悪さをしているなぁと。

聖娼女のようにエロシーンだけなら絶大な威力を発揮するのが分かっているので歓迎なのですが、通常シーンは普通のテキストで良いでしょ……あと通常テキストにしても常にウィンドウ透過度がMAX固定なので見難い。

低価格だから致し方なしとは思うものの、やはり前作で出来ていたことが出来ないというのは結構なストレスになります。


◆えっちなしーん

シーン数は14。
基本はゆっきー単独でパコは3P時のみ登場(該当シーンは三つ。本番はそのうち二つ。パコにも中出しは出来ます)。

聖娼女では売春シーンが思った以上に少なく、ガッカリさせられましたが本作のそれは全て売春なので安心。

陸上部ということを活かしてユニフォーム着用でヤるのもあれば、学校の制服でのプレイもありますし、全裸やエロ水着も有りとコスチュームは豊富。
相手はそこらのおっさんや陸上部のコーチ、同じ学校の野郎どもと一通り押さえています。

売春モノの定番、パンツやらなんやらにお札を挟むシーンも勿論ありますよ!(本作ではユニフォームに挟みます)。

また恋泉天音原画のゲームと言えば種類豊富かつ美麗な下着ですが、本作では三種類のそれが楽しめます。
まあ内一つはブラしか見れませんが。


……個人的に一番エロかったのは売春を責めに来た(といっても下心丸出しですが)陸上部のコーチに口封じするためにパコが淫らな誘惑をするところですかね。
こういう男を身体で釣るのって中々見れんからなぁ。

そして同シーンのゆっきーが売春告白してるのを聴いて勃たせてるコーチに気付いたパコが心底見下した声音で「こいつ、勃ってるよ」。と吐き捨てるところは最高でしたね……やっぱ鶴屋春人って神だわ。

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感想は以上です。

不満があるのも確かなのですが、個人的にはプレイし終わった後すぐにもう一周してみようと思わされたりと何処か惹かれるものは確かにありました。

シリーズ化するならあまり語るべきことではないのかもしれないけど、レイドを顎で使って支配しているどころかゆっきーを陥れた……いや、救ったり、結構な規模の売春斡旋のようなものまでこなしている現在のパコが出来上がるまでを読みたいですね、

本編を終えた後だと序盤にパコがゆっきーにこぼした、「中学の頃に戻りたい。あの頃は何もなかったけど、私が欲しかったのはこういうものじゃなかった」という台詞が頭にこびりついて離れない。

その後に続く、「助けてよ」という言葉も演技だったのだろうけど、本心から出た言葉でも
ある気がします。

nullの歌詞もゆっきーのことも書いてあるけど、どちらかと言うとパコメインだよなぁ。