ゾンビのあふれた世界で俺だけが襲われない VOL.1


2015年2月にSEACOXXから発売された、ゾンビのあふれた世界で俺だけが襲われない VOL.1の感想になります。

DL版が先行販売されてから約一年。
当時から気にはなっていたもののDLはなるべく手を出したくない性分のせいで見送り続けてきましたが、今月29日にようやくパケ版が発売されたことでプレイできました。

面白かったかと訊かれれば面白かったと返せる作品ではあるのですが、力が入っているように見せかけてある意味では手抜きと言わざるを得ない内容のせいで素直に褒められない作品となりました。

あとパケ版タイトル見ると分かるようにこれ単体では完結しませんからね。

以下は詳細な感想。


◆ルート構成&シナリオ

本作はWEB小説投稿サイト、小説家になろうで連載されている(正確にはその18禁版のノクターンノベルズ)同名の作品をノベルゲーム化したものです。

故にルートや選択肢などは一切ない一本道のゲームであり、ひたすら進めるだけの内容となっております。
この辺りがやっぱり手抜きなんですよね。

ともかく悪い点は後でまとめて挙げるとして、まずはシナリオについて。


内容は突如として起こったパンデミックによってゾンビが溢れる地獄と化した世界で、何故かゾンビから襲われない主人公がその立場を利用してゆるいサバイバル生活を送るというもの。

所謂俺tuee系に分類されるのでしょうか。

まあこの前提条件のせいで緩くはあるのですが、作中にいるゾンビは主人公以外の人間は普通に襲って殺しにきますし、出てくるモブやヒロインはそのゾンビだらけの過酷な状況の中で荒んでいるので雰囲気自体はそこそこ重いです。

世に溢れているゾンビモノの創作物を思い浮かべて貰えればいいかなと。


主人公は主人公でかなり冷酷……というより機械なのではと思うぐらいに淡々としているので、この手の作品によくある今正に襲われているけど、目の前にいるゾンビが生前の知り合いで中々割り切ることができない……などのような葛藤がないのでその辺の茶番が嫌いという方は合うのではないかなと。

自分の特性を理解した瞬間に身体に傷が殆ど無い女ゾンビを閉じ込めてオナホ扱いしたり、美人なゾンビの胸を通りすがりに揉むとか普通にしますからね。

この辺の舞台装置地味た割り切りの良さと自分にとってメリットがある行動を淡々と積み重ねていくのでテンポはかなりいいです。
文章が完了形を多用しているのも相まってかなり機械的な印象。


またこの文章と主人公のせいで作品全体が味気ないものに感じそうではありますが、シナリオ自体はゾンビだらけの世界での食料、住処、武器の確保などのサバイバル的要素と他の生き残りとの衝突や触れ合いなどの人間ドラマ的要素をきちんと描いていて普通に面白かったり、主人公以外は人間味にあふれたキャラが揃っているのでそういう心配はしなくてもいいかなと思います。

この辺はWEB小説と言えど人気作の名に恥じないものでした。お見事。


ただ個人的には俺tuee系というと受け手を圧倒的な力だったり優位なポジションに立っている主人公に自己投影させるのが狙いの作品というイメージがあるのですが、この主人公は前述のように淡々としていて機械的+若干サイコパス方面に舵を取っていてあまりそういうのに向いていないタイプに見えたので、そういうのを求めている人には合うのか判断が付きませんね。

主人公も一人のキャラとして見るタイプの方は特に問題無いでしょう。


◆エロゲではなく電子エロノベル。クオリティは高いがある意味では手抜き移植

悪い点なのですが、一言で言うなら見出しの通りなんですよね。

本作はエロゲでメジャーな画面下部にテキストウィンドウを表示させる所謂ADVタイプではなく、全画面をウィンドウで多い文字を表示させるノベルタイプとなっております。

このタイプだと好みの問題では有るのですが立ち絵や背景、特にCGが見難くなってエロゲの華であるイラスト類の力が落ちてしまうんですよね。

濃度変更があるのである程度は調整できますが、絵を見やすくすると今度は文章が見難くなる問題にぶつかりますし。

折角本作はサブローさんの美麗な絵とクオリティの高い塗りがあり、立ち絵差分もそこそこ。

値段の割に豊富なCG(21+ゾンビCG11)。
背景も中々とこれらが弱まっているのが本当に残念なんですよね。


加えて小説の文章をそのままゲームに落とし込んでいるので必然的に台詞よりも地の文主体になり、これがエロシーンに多大な悪影響を及ぼしてしまっているのがなんとも……この辺りをもう少しなんとかできなかったのかと悔やんでも悔やみきれません。

まあまだvol.1なので今後の改善に期待できなくもないですが。どうせなら簡単な選択肢なども盛り込んで欲しいですよね。

それがやりやすい題材なのですし、エロのバリエーション増加にも繋がりますし。
色々出来る余地があるのに今のままでは非常に勿体無い。


あとはやはり原作からして未完の上、更新停止しているような代物ですから今後きちんと続編が出されるのかという心配もあります。

自分はバルドスカイのように十分なボリュームがあり、同じ年に前編後編を出すという風な受け手のことをちゃんと意識した売り方をしてくれれば、分割商法だろうが歓迎派なのですが、これはちょっとその辺りが不透明ですからね。

パケ版にわざわざvol.1と表記したからには出す気はあるのでしょうが、コンスタントに出してくれないと受け手としては萎えるばかりなのは火を見るよりも明らか。


◆えっちなしーん

時子……2(ゾンビなのでボイス無し)
深月……6(本番4。内妄想レイプ1)

やはりボイス無しヒロインと前述した文章問題によりボイスが少ないのがかなり足を引っ張っています。

絵自体は非常にエロい上にシーン自体も元が小説だけあってヒロインの心の動きなどを良く描いていていいのですが、ボイス……ボイス……。

この辺りエロゲ用に台詞を増加させたり、時子に喘ぎを追加したりとかやりようがあると思うのですがね。

やはりこういう所が本作は手抜きなわけですよ。
良いところがあるだけに非常に、非常に勿体無くて私は怒っています。

声優もアグなんとかさんを使っているわけですし。
あとは思ったよりレイプ系が少ないのも残念でした。題材的にもっとあるのかと思いましたが。


ただ同人などに見られるCG集で抜ける人は問題なく抜けるのではないかなと思いますね。
私のようにエロゲは声がないと絶対抜けないという方は相当に厳しい戦いを強いられると思います。

同じ声なし媒体でも漫画は大量のコマでで動きを表現出来るので抜けますが、エロゲは声がなくなると一枚絵と大きな変化は望めない差分・文章しかなくなるので辛いのですよね。

エロゲはやはり絵と声と文章が揃って初めて抜けるモノだと思っているので。

とは言うものの深月との更衣室でのシーンは使えましたね。

比較的ボイスも多く、深月の心情もよく描けていましたし、新しい服と下着を用意したという話の流れからCGでもちゃんとそれが反映されていたのが良かったですね。

サブローさんは神。下着のデザインちゃんとしてくれる人は宝です。


感想は以上となります。

個人的には不満点がありつつも、先が気になりますし、シナリオの題材・絵・声ともにストライクだったのでvol.2も楽しみにしています。
続編でのパワーアップに期待。